75
あぢきなきもの
わざと思ひたちて宮仕に出で立ちたる人の、ものうがりてうるさげに思ひたる。人にもいはれ、むづかしき事もあれば、いかでかまかでなんといふ言草をして、出でて親をうらめしければ、また參りなんといふよ。養子の顏にくさげなる。しぶしぶに思ひたる人を忍びて壻にとりて、思ふさまならずとなげく人。
76
ここちよげなるもの
卯杖の祝言。神樂の人長。池の蓮の村雨にあひたる。御靈會の馬長。また御靈會の振幡。
81
物のあはれ知らせがほなるもの
鼻たるまもなく、かみてものいふ聲。まゆぬくも。
85
なまめかしきもの
ほそやかに清げなる公達の直衣すがた。をかしげなる童女の、うへの袴など、わざとにはあらで、ほころびがちなる汗袗ばかり著て、藥玉など長くつけて、高欄のもとに、扇さしかくして居たる。
若き人のをかしげなる、夏の几帳のしたうち懸けて、しろき綾、二?#123;ひき重ねて、手ならひしたる。薄樣の草紙、村濃の糸してをかしくとぢたる。柳の萌えたるに青き薄樣に書きたる文つけたる。鬚籠のをかしう染めたる、五葉の枝につけたる。三重がさねの扇。五重はあまり厚くなりて、もとなどにくげなり。能くしたる檜破子。白き組のほそき。新しくもなくて、いたくふりてもなき檜皮屋に、菖蒲うるはしく葺きわたしたる。青やかなる御簾の下より、朽木形のあざやかに、紐いとつややかにて、かかりたる紐の吹きなびかされたるもをかし。夏の帽額のあざやかなる、簾の外の高欄のわたりに、いとをかしげなる猫の、赤き首綱に白き札つきて、碇の緒くひつきて引きありくもなまめいたり。
五月の節のあやめの藏人、菖蒲のかづらの、赤紐の色にはあらぬを、領巾裙帶などして、藥玉を皇子たち上達部などの立ち竝み給へるに奉るも、いみじうなまめかし。取りて腰にひきつけて、舞踏し拜し給ふもいとをかし。火取の童。小忌の公達もいとなまめかし。六位の青色のとのゐすがた。臨時の祭の舞人。五節の童なまめかし。
(收起)