第八章 2
P478-479
ブルーグレーの帯がついた、古いが美しい装丁の本である。『天人五衰』という題名も、その下に並ぶ三島由紀夫という文字も横書きである。蛇、象、牡鹿(おじか)、孔雀の絵がそれぞれ四つの輪の中に描かれ、題名と著者名も含めて、橙色の蛇が四匹、飾り模様のように函の周囲をぐるりと囲っている。 私は帯をはずさないよう注意しながら、そっと函から本を取り出した。カバー絵は三島由紀夫の妻、瑤子によって描かれた抽象的な絵である。光の加減によって色の異なりを見せている、深い深い海。積乱雲が空にわき上がり、水平線の彼方を進む、一艘の小さな船……。 引自第478页
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