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「何ですか、これは」 「君に調べてもらいたい内容だ。大雑把にではなく、正確さが必要だ」 「これを調べれば、謎が解けるんですか」 すると湯川は瞬きし、ふっと息を吐いた。 「いや、たぶん解けないだろう。解けないことを確認するための調査だ。君たちの言葉を使えば、裏づけ捜査ということになるのかな」 「どういうことですか」 「今日、君が帰った後、あれこれと考えてみた。真柴夫人が毒を入れたと仮定して、どういう方法を用いたのかをね。だけどどうしてもわからない。僕が出した結論は、この方程式に解はない、というものだった。ただ一つを除いてね」 「ただ一つ?じゃあ、あるんじゃないですか」 「ただし、虚数解だ」 「虚数解?」 「理論的には考えられるが、現実的にはありえない、という意味だ。北海道にいる夫人が東京にいる夫に毒を飲ませる方法が一つだけある。だけどそれを実行した可能性は、限りなくゼロに近い。わかるかい?トリックは可能だが、実行することは不可能だということなんだ。」 薫は首を振った。 「おっしゃってることがよくわかりません。だったら結局、不可能だってことじゃないですか。それを証明するために、私にこんな調査をしろっていうんですか」 「答えがないことを証明することも大切だ」 「私は答えを探しているんです。理論なんかどうでもいいから、事件の真相を突き止めたいんです。それが私たちの仕事です」 湯川は口をつぐんだ。ちょうどその時、ココアが運ばれてきた。彼はゆっくりとした動作でそれを飲んだ。 そうだな、と彼は呟いた。「たしかに君の言う通りだ」 「先生・・・・・・」 湯川は手を伸ばし、テーブルに置いた紙を取った。 「科学者の習性でね、たとえ虚数解であっても、答えがあるというわけで落ち着かなくなる。しかし君たちは科学者ではない。そんなものの存在証明に貴重な時間を使わせるわけにはいかない」きちんと畳んだ紙を懐にしまい、湯川は口の端に笑みを浮かべた。「この話しを忘れてくれ」 「先生、そのトリックを話してください。それを聞いてから、私が判断します。そうしてそれだけの価値があると思えば、先程の内容を調べてみます」 「それはできない」 「どうしてですか」 「トリックを知れば、君は先入観を持ってしまう。それでは客観的な調査はできない。逆に君が調査をしないということであれば、トリックを知る必要もない。いずれにせよ、今ここで話すわけにはいかない」 湯川の手が伝票に伸びた。だが一瞬早く、薫が奪い取っていた。「ここは私が」 「そういうわけには行かない。無駄足を踏ませた」 薫は空いたほうの手を彼に差し出した。 「さっきのメモをください。調べてみます」 「虚数解だぞ」 「それでも知りたいんです。先生が見つけた、たった一つの答えを」 湯川はため息をつき、再びメモを取り出した。薫はそれを受け取り、もう一度内容を確認してからバッグにしまった。 だが湯川は頷かない。眼鏡を指先で押し上げ、それはどうかな、と呟いた。 「違うんですか」 「もし虚数解でなければ」彼は目に鋭い光を宿らせて続けた。「おそらく君たちは負ける。僕も勝てないだろう。これは完全犯罪だ」 引自 19
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