未来主義の彼方へ
多和田葉子:震災直後「不死の島」(2012年)
→「献灯使」(2014年)
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1、障害者的身体をめぐって
・人間の身体を蛸のような無生物と接続し、理念的で抑圧的な人文主義による「人間像」そのものに問い直す、ポスト・ヒューマンの思想に通じる→「脱人間主義」
・健常主義もしくは人間主義に基づく閉鎖的な生の様態とは、別様のものであることの価値を強調する
・「障害者によって生じる身体の、認知の、そして経験の多様性」を価値づける
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2、クィアな身体と反再生産的未来主義
・性の転換→ジェンダー・アイデンティティとセクシュアル・オリエンテーションも曖昧なクィアな様態→次世代再生産の不可能性
→子供に未来を託して資本主義体制の夢を問い直す、抵抗の表象である
・既存の政治:婚姻制と結びついた既存のヘテロセクシズム(heterosexism)的な、すなわち生殖主義的な社会秩序を前提しており、常にそのイデオロギー秩序を再生産する
・既存の政治への強力なアンチテーゼ:「未来」と「子供」を結びつけない「クィアなセクシュアリティ」、すなわち「クィアネス」
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3、「献灯使」という子ども騙し
・選抜制度自体:能力主義的ひいては優生思想的と捉え直せる
・「マドラス」「沖縄」→「ディストピア」(dystopia)
・献灯使の未来→「子供騙し」(the future is Kid Stuff)
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4、可能性としてのケア
・義郎の新たな価値観の受容:再生産性だけでなく、階級意識や金銭的価値に基づく優劣による評価軸を破棄し、他者とともにいることや動物的な身体感覚を抱くようになった
・クィアネスと障害(ディスアビリティ):新自由主義的な資本主義社会の基軸としてある、「強制的健常身体性の制度」(a system of compulsory able-bodies)を穿ち、新たに身体と欲望を別様に想像させる批評性につながる
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原文/武内佳代