「忍び寄る災厄、高まる圧力。
緊迫感に息がつまり、本を閉じたくても閉じられない。
いま、ここにあるディストピアを描く、戦慄の至近未来サスペンス。
〝あの日〟の記憶があまりにも生々しく甦る」――大森望氏
「台湾はアジアで唯一、原発にノーと言える国。
原発事故とともに浮かび上がる様々な人間的な問いを扱った
SFミステリー仕立ての力作」――多和田葉子氏
台湾発、戦慄の至近未来サスペンス!
福島第一原発事故後、台湾で第四原発の建設中止を求める運動が一気に高まったことを受け、著者は「現実への介入」を掲げて本書を書きあげた。原書は2013年に台湾で刊行され、呉濁流文学賞及び華文SF星雲長篇小説賞をダブル受賞するなど高く評価され、大きな話題となった。蔡英文政権は原発廃止を閣議決定し、現実世界の動きにもつながった。
2015年10月、台北近郊に建設された第四原発が突如原因不明のメルトダウンを起こした。台湾政府は北台湾地域を立入禁止区域に指定、台南への遷都を宣言する。生き残った第四原発のエンジニア・林群浩は、事故の影響で当時の記憶を一切失っていたが、あるきっかけから失われた記憶の中に原発事故の原因があると知る。そこには原発事故の際に決死隊を組織して一躍国民的英雄となった次期総統候補の姿があった――。
グラウンド・ゼロ(原発事故)以前と以後の時間が交錯しながら物語は進み、人と人、個人と組織との関係、そしてあらゆる価値観が大きく変化する中で、林群浩を取り巻く人物たちが様々な問いを投げかけ、原発事故の真相に迫っていく。事故の背景にある台湾社会の腐敗や硬直した官僚機構、原発をめぐる複雑な利権問題を迫真の筆致で描くが、その構造は日本にも当てはまる。
文明への幻想と人間社会の深い闇を抉り、福島第一原発事故を経験した日本に強烈なメッセージを訴えかける傑作長篇。
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