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本書はT. Tao “An Introduction to Measure Theory" (American Mathematical Society, 2011) の全訳である。邦題では内容の大半を占める「ルベーグ積分」の名を冠している。
原著者のタオは9歳で大学に入学し、12歳で国際数学オリンピック金メダルを獲得(2016年現在まで最年少記録)、20歳で博士号を、31歳でフィールズ賞を授与された天才中の天才である。
本書はタオがカリフォルニア大学の大学院生向けに行った講義をもとに書かれており、文章も講義調の親しみやすいものになっている。全体は2章構成だが、主題は1章に集約されており、2章は問題解法のいろいろなコツを紹介する付録的内容となっている。
非常に多数の演習問題を含む点と、図が1枚もない点は本書の特徴のひとつとなっている。演習問題への解は...
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非常に多数の演習問題を含む点と、図が1枚もない点は本書の特徴のひとつとなっている。演習問題への解は与えられていないが、定理の拡張や必要条件の証明自体が演習問題になっている場合が多く、訳者も序文で「まずは証明や演習を飛ばして」全体像をつかむことを勧めている。タオ自身は講義で“ここテストに出るよー"と宣言することで演習問題への挑戦を促したとある(まえがき)。また、図はきわめて有用だからこそ読者自身がかくべきで、「著者が提示するイメージ」に頼ることを避けるために意図的に載せていない(本書2.1.8項).
日本の理工系学部ではルベーグ積分は3年次程度の必修相当科目なので、本書は専門書としてはエントリーレベルの本となる。そのため本論部分の活字サイズを落とさず、読みやすさに配慮した。訳者の精緻きわまる訳と合わせ、大変良質な訳本である。
舟木直久
1951年東京都に生まれる。1976年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。現在、東京大学大学院数理科学研究科教授・理学博士。専門は確率論
乙部厳己
1972年大阪府に生まれる。2001年東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了。現在、信州大学理学部准教授・博士(数理科学)。専門は解析学
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