自覚の精神病理

原文摘录   · · · · · · 

• ここに述べたような妄想的ないし幻覚的自覚という自己のありかたは、そのまま精神分裂病者の自 閉的なありかたに通じている。症状としての自閉症は、おそらく他の多くの「対人精神病」にも認め られるだろう。そしてその場合の自閉症というのは、ブロイラーがこの概念を創作したときにこれを 定義しているように、外界の現実から自己の内界へと引きこもって他者との感情的交流よりも自己の 妄想的表象の観念界が優位を占めている状態を指して言われてよいし、またミンコフスキーの定義に 従って、現実との生命的接触の喪失だと言ってもよいだろう。しかし真の精神分裂病について自閉性 という表現が用いられる場合には、これらの定義ではやはりいささか不十分であるように思われる。 これまで述べてきたように、精神分裂病者にとって怖るべきものとして問題になっているのは、けっ して外界の他者ではない。たとえそれが「他者」の姿をとるにしても、それは自分と他人、内界と外 界とが共にそこから別れて生じて来る源泉としての自覚の根源に、突如として無媒介的に浮かび上ってくる「他者性」なのである。精神分裂病者が外界から自己を遮断して内界に閉じこもることによっ て、けっして彼の安全は保障されない。彼の「内界」そのものが、すでに完全に危機的様相を呈して しまっているからである。 また精神分裂病の自閉性は、単なる現実との接触の喪失ではない。この自覚の源泉をすぐれた意味 で「現実」と呼ぶことはできるだろう。それは現実にあるもののいっさいがそこから「ある」という ことを得て来る源泉だからである。しかし患者はこの源泉との接触をけっして「喪失」してはいない。むしろ、この現実（怖るベき現実)は患者にとって余りにも近すぎるというべきだろう。患者はこの 「近さ」に対して怖れを抱き、その無媒介性に対して慄然たる不安を抱くのである。精神分裂病者の 自閉は、いってみ... (查看原文)

  碎虹蝶歌 2021-08-04 01:43:38