本書は、メディアなどを通じて世に流通する怪しいデータ分析に抗するための読解力を、「問題」と「解説」を通じて習得する、鍛える本です。この「世に流通する」には、自身がやってしまう間違った分析も含まれます。データ分析を受け取る側、生産する側双方が、本書の想定読者になります。
現在、行政、メディア、SNSなどさまざまな経路でデータやその分析が流通しています。しかし、その一定数は適切に数字が扱われおらず、我田引水や自画自賛のためにデータが利用されていることも多いのが実態です。
なお、ここで言うデータ分析には、簡単な散布図やクロス表、ランキングや統計の数字そのものなど、何らかのデータと分析を根拠とした議論、主張すべてを含みます。
こうしたカジュアルに流通するデータ分析は、余程注意していないと騙されてしまうことがあります。実は○○に関するデータでは作られていなかった場合でも、「○○ランキング」として発表された表や記事を真に受けて議論してしまったり、というように。
こうした怪しいデータ分析にうっかり騙されてしまうのは、それらの多くが僅かな情報しかわれわれに伝えないことが背景にあります。逆に、そのごく僅かな情報を注意して読めるようになれば、怪しい分析に騙されにくくなり、批判や反論を行うことに繋がります。
このごく僅かな情報とは、分析者や分析利用者の主張と、これを支える何らかの分析結果です。本書ではこれを「議論と数字」と表現します。この議論と数字の間にズレがないか注意深くなることが大切なのです。
そのうえで重要となるのが「因果関係」です。分析対象の現象を作り出している因果の構造を広く深く探ることができれば、提示された分析結果と主張との関係を崩すことができるからです。
まとめると、「議論と数字のズレに注意しながら因果関係を考察する」ことが、本書が示すデータ分析読解の基本になります。本書では8つの章に分けて基本的な思考法や技術を紹介していきます。
さて本書は、このデータ分析読解の基本を紹介することが最終目的ではありません。お読みいただいたみなさまのデータ分析に抗する力、読解力を高めることを最大の狙いとしています。そのために、失敗例を用いた「問題」を提示して、技術を実践する、思考する機会を各章に設けています。
そして、大なり小なり思考していただいたところに「解説」を加えることで、さらなる理解を獲得し、データ分析読解の技術や思考法の定着を図ります。この際に、知っておいたほうが良い統計学に関する知識も紹介いたします。しかし、基本は「習うより慣れよ」です。
具体的な出題内容は下記の細目次をご覧ください。だいたいはメディア等で流布されたごく簡単なデータ分析、データを根拠とした何らかの主張を批判的に読み解いてもらう感じになります。
慣れない人にとっては難問もありますが、だからこそ、データ分析を読む力が向上するはずです。試験とかではないので、気軽に頭を使っていただければと考えています。
お読みいただければ幸いです。
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